無言
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今日、久しぶりに結美の怒った顔を見た。
でも、きっと怒りの感情は半分以下で、悲しい気持ちの方が多いような表情だった。
結美は怒ると黙る。
何故か、言いたい事が言えなくなる。
でも、そのストレスは時間差で発散される事を、経験上俺は知っていた。
助手席で、左の窓ばかり見ている結美。
要は、俺の方を向きたくない訳で。
かなり不自然に首を横に向けたまま、ずっと無言を貫く。
俺はさすがに気になり、車を止めた。
「結美。」
もちろん、返事は無い。
首もまだ左を向いたまま。
「結美。」
俺が無理矢理こちらに身体を向けさせると、眉毛が八の字になっていた。
「どうした。」
まだ無言。
そして、目の中にジワジワと涙が。
「結美。ごめん。」
そう言って抱きしめると、俺の腕の中で小さく「うー」と呻いた。
俺は怒ったつもりは無かったけど、結美は責められていると感じたようで。
気持ちの行き違いが、瞬時に小さなわだかまりを作った。
結美が言えなかった事を全部吐き出した後、俺の予想した理由が確定された。
「もう、絶対ナビなんてしない・・・。」
そう。
頼んだ俺が悪かった。
来た道を戻ったのも、結局遠回りになった事も、すべてナビを頼んだ俺が悪い。
設定された道を画面で見て確認しないまま走った俺が悪かった。
まあ、その後、店員の「奥様」の一言で機嫌は良くなったんだけど。
結美のあんな顔を見たの、久しぶりだったな。
結美にまた怒られるかもしれないけど、うっかり、怒った顔も可愛いと思ってしまった。
でも、これからは気を付けよう。
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